バッハと弁当作り

 

 私の朝は慌ただしく朝食の用意と高校生の弁当作りで始まる。目覚まし時計を止めたら何も考えず布団から体を起こし眼鏡をかけて、ほとんど頭がボーっとしたまま階段を降りたら明かりをつけてキッチンに立つ。不思議なのは頭が全然動き出していなくても身体はちゃんと食事の用意のために動くのだ。高校生一人目が早く家を出るため、時間との勝負。手際よく作ったら、できたものをプレートに並べたり弁当箱へ詰めるまで一気に集中できる。もちろんこの子が体調が良いのか、機嫌が良のいか、朝ごはんを食べる様子からさりげなく観察することは怠らない。

 

 来月に本番があるので地道にピアノに向かっている。今回は暗譜が怖いのを承知でバッハの小品を選んだ。バッハのクリスマスオラトリオを聴きながら年末年始キッチンに立っていたら、この音楽に自分が入りたいという思いがどんどん強くなり、そうは言ってもこんな大曲にコーラスの一員として加わるチャンスだってないしな・・そんなこんなで身近にある平均律クララヴィ―ア曲集を弾き始めた。

どうやらバッハを弾くほどに、朝の弁当作りのような日常のひとつひとつが尊いと感じてくる。今年はバッハの音楽が語りかけてくるものをゆっくり探訪する一年にしたいなあ思う。

(2024年2月)